日本財団 図書館


 

きを見ることができます。
そして、その姿を捕らえようと世界から訪れる取材陣に、「わたしにカメラを向けてもしょうがないでしょ。わたしが仕え、わたしと一緒にいるこの人たちに、そして貧困に、光を当ててください」という、彼女の気持ちがわかる気がします。
こんなふうに見てくると、アガペーというのは、なんだかやたら高尚で、悟った聖人か、よほど不思議な人でないと実行できないような印象をもっかもしれません。
しかし、実は、それほどだいそれたものではないようです。むしろ逆で、日常、けっこう身近なところで、そうとは意識されずに実行されている愛のかたちなのです。ポイントは、“かかわり”の原点が自分にではなく、相手にあるということ。そして、その相手に全人的にかかわる、ということです。
たとえば、電車やバスで見知らぬお年寄りに席を譲るとき。あるいは、街角でとまどっている旅人に声をかけるとき。赤ちゃん連れのお母さんや、ハンディのある人にちょっと力添えするとき。そんなとき、ほとんど無意識で、自分のことはちょっとわきにおいて、相手の人とかかわっています。これはまさしくアガペーの行動パターンです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION